敷島ワイナリー(山梨)
松土達也(営業担当)飯沼芳彦(醸造担当)
-ワイナリーの歴史を教えてください。
松土 もともとは養蚕業を営んでいましたが産業が衰退していくに合わせて、桑畑をブドウに替えていったのがはじまりです。一部をブドウにすると殺虫剤を蒔いたりするので蚕は育てられない。替える時は替えるということで一気にブドウ畑に替えました。製造免許を取るのは当時は大変だったはずです。ですから生半可な気持ちではできなかったと思います。今ある畑のところも元々は全て桑畑です。この畑は全てが自社畑ではなくて生食用の農家さんも入っています。だいたい下地に草が生えていないところが生食用で、うちは除草剤を使わないので下地にいろいろな草が生えています。甲州は樹齢が40年にもなっています。農薬もほとんど使いません。ボルドー液と殺虫剤くらいですね。畑の方角は南東向き。日当たりはとても良いです。13品種くらいブドウを栽培していますがタンクが限られているので、細かい区画毎のキュヴェなどは生産できていません。
-この土地にあっている品種はありますか?
松土 カベルネ・ソーヴィニヨンが意外にあっていますね。あと、ソーヴィニヨン・ブラン。プティ・ヴェルドも作っていますが糖度が25度くらいのかなり濃いしっかりしたものが獲れます。メルローなどは長野産メルローがブランドになりつつあるので、山梨メルローも負けてないぞと、今後更なる品質アップを目指しています。
-「マウント・ワイン」と謳われています
松土 勝沼は結構ひらけている場所ですが、ここは山深い。ですからこの場所の特徴として謳っています。
-醸造担当の飯沼さんは、このワイナリーができた時からいらっしゃるそうですね。
飯沼 はい。23、4才の頃に参加しました。33年前です。当時はワインの製造法の確立がされてなくて、いろいろな資料を取り寄せて学びました。農大で醸造学を学びましたが、ワインは1講座だけ。1時間くらい話して、これ以上知りたいやつは山梨へ行ってこい。それだけ(笑)
-それでは醸造は実地で学ばれたわけですね
飯沼 はい。今は技術屋さんを育てるのにかなり厳密に教育していくみたいですが、私は現場で学んでいきました。
-(醸造設備で2017年のベリーAを試飲)
飯沼 渋味とかがなく飲みやく仕上げています。イチゴの香りが残ることを大事にしています。醸し期間は4日くらい。主発酵が終わらない段階で圧搾します。
-(醸造設備のセラーを見る)
飯沼 樽は全体で25、6本ありますが、そのうちフレンチオークが6本。ほとんどがアメリカン・オークです。アメリカン・オークは強い風味がすぐに出るのですが使える寿命が5年と短い。赤ワインで長く熟成させる時は5年過ぎた古樽で熟成させます。
-醸造で心がけているところは?
飯沼 ブドウがいいものさえ育てられたなら、醸造はそんなに難しくないです。そのまま素直にやればいい。薄いとかセニエとかやらなければなりませんが、いいブドウであればその必要はありません。ブドウをつぶしたら酸化を防ぐために亜硫酸を使いますが大量に使うと香りが抑えられています。ですから、大量に使いたくない。その場合、搾ったらすぐ発酵してもらいたいのであえて人工酵母を使用しています。あと自社畑なので選果を自分たちの手で、目でできるというのが大きいですね。常に健全なブドウでワインを造れることが強みです。あとはクリアに造りたい。綺麗に造りたい。
-敷島ワイナリーさんを拝見すると“懐かしい”古き良き葡萄酒造りという印象を強く受けます
飯沼 はい。実際、あまり難しいものでないんです。33年前からホーロータンクを使っていますが今でも現役で使用できています。最新式ではありませんが、昔ながらに丁寧にシンプルに造っています。
-敷島ワイナリーさんの特徴は何でしょう
松土 まずやはり自社農園100%のところでしょうか。勝沼のワイナリーさんなどは農家さんのブドウを買って造るのが原則でした。ブドウ農家がワイナリーになるというのは昔はなかった。それがひとつのうちの特徴です。
-日本のドメーヌ型の元祖のような存在ですね
松土 そうですね。甲州、ベリーAまで自社で賄うというのは少ないでしょうね。甲州、ベリーAは買ったほうが安いので(笑)機械とか設備とか最新のものが入っているわけでなく30年以上前のままです。もはや飯沼さんじゃないと動かせない設備ばかりです。30年、手作りに近い形でワインを造っていますね。もちろん最新設備にも惹かれますが、無いなら無いなりの造り方があります。どうやって工夫すればできるか考えていくのも面白いです。大量生産はできないけれど手間は惜しまない。そして、結果、良いものができたらなと思っています。
-将来の展望はありますか?
松土 有名にならなくていいから、うちのワインが好きという人が少しでも増えていけばいいと思っています。派手に売れなくても地味ながら一定数のファンをつかんでいけたら。消費者の方と、浅く広くでなく、狭く深くというお付き合いをしていきたいですね。
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